通夜の帰り道、妹に「夫婦っていいなぁ」と言った。
「今まで(おじさんのお母さんと)3人で暮らしてたんだって。だから、これからは旦那が居なくても義理のお母さんと2人で暮らすんだよ。おじいちゃんほどじゃないけど認知症もあるから大変だと思うよ。」
「でも、愛する人の思い出と、愛する人のお母様と一緒に暮らしていくんだよ。いいなぁ。。。」
「それは綺麗ごとだよぉ~思い出は話し相手にもならないんだよ。私は子供が居た方がいいと思うけど?」
「そうかしら。」
「そうよ。」
「じゃ、アンタは娘達と旦那だったらどっちを選ぶ?」
「娘でしょう。」
「ほんとに?」
「自分のおなかを痛めて産んだ娘だよ。パパは血の繋がってない他人だもの。」
「えぇ~」
「今はそんなにキラキラときめいているわけじゃないんだから。」
「そんなに仲よくて一緒にいても?」
「そんなものだよ、子供が居るから繋がっているようなものだよ~」
「そうは見えないよ。」
「他人だから、知らなくていいことは知らないようにしてるの。携帯も絶対見ないし。向こうもそうだと思うけど。一度知っちゃったら気持も変わっちゃうだろうし。知らなかったらそれで済むでしょ。適当に距離を置いてるの。」
「ふうん。」
「お姉ちゃんだってこれから誰かみつければいいじゃない。これからだったら、子育てがないからいつも新鮮でいられると思うよ。」
「出会い系とかで結婚詐欺にあうのも怖い。」
「お姉ちゃん、見る目がないからね・・・過去を振り返ってみても・・止めておいた方が無難かもね。」
「万が一、今から結婚したって厚みがないんだよ。葬式だって呼ぶ人が誰だか分からないもん。」
「そんなの一緒よ。私だって結婚して2年目ぐらいと今とでそんなにパパの知り合いなんて増えてないよ。結婚してすぐ葬式するんじゃないんだから。」
「う~ん、そうなんだけど、何か違うんだよ、何十年とかさ、一緒に子育てしたりさ、いっぱい思い出あったりさ、そう言う厚みがないんだよ~今からじゃ。ああ言うお通夜にならないよ。」
「ねぇ、お姉ちゃんペットは?周りのお母さんでも多いよ。子どもが巣立った後に飼うペット。」
「やだよ。お金掛かるし。下手に命あるから面倒になっても無碍にできない。」
「旅行とかも行けないしね・・・じゃガーデニングとか?」
「あたしがやる訳ないでしょう。そう言うんじゃないの。共に笑ったり泣いたりした思い出がいっぱいあって、その人が死んだ後も生き続けるの。人生の達成感みたいなの。それがもう私の人生にはないの。」
「その代り自由があるじゃない。」
そうなのよね、よく言えば自由。簡単に言えば孤独。
誰かと分かち合うか、一人で追いかけていくか。
二通りの生きざまがあるとしたら、私は後者の旅に出ているのだろう。
他方を羨んでも始まらない。
もしそうだったら、今の自分もこれからの自分もないのだから。
と言うわけで、これからもこんな風に生き続けるのだ。
私は。
やはり妹に彼のことは話せなかった。
また今度、別の機会にしよう。