父の顔が窓に向いている。
窓の方から顔を覗いてみたけれど、分かる様子もなく、「sakeだよ」と言っても分からないようだ。
父の視線の先を追ってみると、青空に夏の雲だ。
たぶん、父の目には空も雲もなく、ただ光があるだけなのだろう。
夏の雲は少しづつ場所を変えて流れていくのが見える。
カチカチと歯の音だけがずっと聴こえる。
熱も下がって一昨日から抗生剤もやめてます
水分だけでも口から取れるようにこれからしようと
しかし
もう分かってます、大丈夫ですと言う顔をした。